ホームページを作ったのに、問い合わせが来ない。
そう感じて制作会社に相談すると、「更新しましょう」「記事を書きましょう」と言われることがあります。
言われたとおりに更新を始める先生も多いでしょう。ところが、しばらく続けても問い合わせは増えない。やがて「これを続ける意味があるのだろうか」と感じるようになります。
結論から言えば、問い合わせが来るかどうかは、更新の頻度だけでは決まりません。
この記事では、実際に支援している税理士事務所の事例を交えながら、問い合わせにつながるホームページと、そうでないホームページの違いをお伝えします。
更新しているのに、問い合わせが来ない原因は?
まず、「更新を続ければ、自然と問い合わせが増える」という考えを見直す必要があります。
きちんと更新しているのに、問い合わせにつながっていない事務所は実際にあります。そうした事務所のブログでよく見かけるのは、次のような内容です。
- 年始のご挨拶
- 確定申告の時期のお知らせ
- セミナーを開催しました
- 交流会に参加しました
たしかに更新はされています。何も発信していない事務所に比べれば、取り組んでいること自体は大きな前進です。
ただし、これらは主に事務所からのお知らせです。読者が抱えている悩みや疑問への答えにはなっていないため、更新を重ねても問い合わせにはつながりにくいのです。
問題は更新頻度ではなく、「誰に向けて、何を伝えているか」にあります。
「何を書けばいいか分からない」の正体
更新が続かない理由を尋ねると、多くの先生が「時間がない」と答えます。
もちろん、税理士の仕事は忙しく、記事を書く時間を確保するのは簡単ではありません。ただ、本当の負担は時間だけではないように思います。
パソコンに向かって「さあ書こう」と思った瞬間に、手が止まる。何を書けばよいのか分からない。思いついたネタをメモしていても、いざ書き始めると「この内容でよいのだろうか」と迷ってしまう。
このように、毎回ゼロから内容を考える状態こそが、更新を重くしている原因です。
負担の大きい作業は、忙しい時期ほど後回しになります。「時間がないから書けない」というより、書く内容が決まっていないために作業が重くなり、結果として後回しになる。この順番です。
裏を返せば、あらかじめ書く内容が決まっていれば、あとは計画に沿って進められます。同じ「更新」でも、取り組みやすさは大きく変わります。
書く内容は、「誰に選ばれたいか」から決まる
では、何を書けばよいのでしょうか。
出発点は、記事のネタ探しではありません。まず考えるべきなのは、「どのような事業者を顧問先にしたいか」です。
- どのような業種・規模・事業段階の人に来てほしいのか
- その人は、どのような場面で何に困るのか
- 困ったときに、どのような言葉で検索するのか
ここまで整理できて、初めて書くべきテーマが見えてきます。
多くのホームページでは、この順番が逆になっています。先にサイトを作り、公開してから「さて、何を書こうか」と考え始める。その状態で書く内容が決まらないのは、ある意味当然です。届けたい相手と伝える内容を、まだ決めていないからです。
ターゲットを絞った結果、想定以上の範囲に届いた
ここで、実際に支援している税理士事務所の事例をご紹介します。
この事務所では、まず顧問先にしたい層を絞り込み、その人たちに向けたページを計画的に作っています。
たとえば、顧問先にしたい層の一つが「これから独立する人」だとします。その場合、必要なのは事務所の日常を伝える記事だけではありません。独立を考えている人が、実際に知りたいことに答えるページです。
- 個人事業主が法人化すると、本当に節税になるのか
- 開業に向けて、何を準備すればよいのか
- 独立前に決めておくべきことは何か
美容業の方を対象にするのであれば、美容室に勤めながら独立を考えている人が、何を調べ、どのようなことに不安を感じるのか。そこから逆算してページを組み立てます。
さらに、「今月はこのページ、来月はこのページ」と月単位で計画します。公開後は、どのページがどれくらい検索結果に表示され、実際に読まれているかを確認しながら改善を重ねます。
特別に複雑なことをしているわけではありません。この地道な繰り返しが、ホームページを少しずつ強くしていきます。
即効性はない。それでも、積み上げる価値はある
正直にお伝えすると、この方法に即効性はありません。Web広告のように、始めたその日から反応が得られるものではないため、短期間での成果を期待しすぎないほうがよいでしょう。
一方で、大きな利点が二つあります。
一つは、作ったページがホームページ上に残り、継続して読まれる可能性があることです。広告は配信を止めれば流入も止まりますが、読者の悩みに答えるページは、その後も検索から人を呼び込む入口になり得ます。
もう一つは、地域や対象を絞ることで、大手と同じ土俵で戦わずに済むことです。大手メディアと記事数で競えば、勝つのは簡単ではありません。しかし、「特定の地域で、特定の悩みを抱える事業者」に向けて丁寧に情報を発信している事務所は、まだ多くありません。対象を明確にすれば、十分に選ばれる余地があります。
運用開始から3か月後に起きたこと
この事務所では、運用を始めて3か月ほどたった頃から、ホームページ経由の問い合わせが入り始めました。
先生にとって、これは大きな変化だったようです。それまでの新規顧客は、ほとんどが紹介によるものでした。そこへ、ホームページを見た方から直接問い合わせが届き、「今までにない感覚がある」とおっしゃっていました。
さらに興味深かったのは、問い合わせをくださった方の所在地です。地元の方だけでなく、遠く離れた関東圏からも問い合わせがありました。
しかも、その方の業種は、事務所が想定していたWeb・IT系でした。狙っていた相手に、想定していた地域を越えて情報が届いたのです。
ターゲットを絞ることは、お客さまを減らすことではない
ここで、多くの先生が不安に感じる点にも触れておきます。
「ターゲットを絞ると、依頼してくれる人まで減ってしまうのではないか」という不安です。
実際、税務顧問の対象となる業種は多岐にわたります。ホームページ経由だけでなく、知人や既存の顧問先から紹介を受けることもあります。一つの業種だけに限定して仕事をしている事務所のほうが、むしろ少ないでしょう。
それで問題ありません。
絞るのは、あくまでWeb上で「誰に向けて発信するか」です。
たとえば、ホームページでは「IT・Web業界の一人社長に強い税理士事務所」と打ち出しながら、それ以外の業種からの依頼も受ける。この二つは矛盾しません。Web上での見せ方と、事務所が実際に対応できる業務の範囲は、分けて考えてよいのです。
むしろ注意したいのは、誰にも対象を絞らないことです。
「税務・会計のことなら何でもご相談ください」と書かれたサイトは、数多くあります。同じような表現が並ぶなかで、読み手の記憶に残るのは難しいでしょう。その土俵では、広告やSNSに多くの人員と予算を投じる大手税理士法人と比較されることになります。
すべての事業者にとって一番の事務所になる必要はありません。特定の業種や悩みを持つ人に、「自分のことを分かってくれそうだ」と感じてもらうことが大切です。Web上で目指すべきなのは、その人にとっての第一候補です。
今あるホームページでも、方針は決め直せる
ここまで読んで、「ホームページを一から作り直さなければならないのか」と思われたかもしれません。しかし、必ずしもそうではありません。
これまで決めていなかったことを、今から整理すればよいのです。
どのようなお客さまに来てほしいのか。その人は何に困っているのか。どのような情報を届けるのか。ここが決まれば、必要なページも自然と見えてきます。多くの場合、サイト全体を作り直さなくても、今あるホームページに必要なページを追加していくことは可能です。
ホームページを作る前に、確認しておきたいこと
最近は、開業時の費用を抑えるため、AIを使ってホームページを作る事務所も増えてきました。交流会などでも見かける機会が増えています。
以前はWordPressのテーマを使って自作していた人が、今はAIを活用して作るようになった。専門知識がなくても形にしやすくなった点は、大きな進歩だと思います。
ただし、作ったあとにページを追加したり、内容を修正したりしやすいかは、事前に確認しておく必要があります。ツールや作り方によっては、公開後の更新に予想以上の手間がかかることがあるからです。
ここまでお伝えしてきたとおり、成果を左右するのは、公開後に必要なページを積み上げ、改善を続けられるかどうかです。最初に簡単に作れることだけでなく、その後も無理なく運用できるかという視点で選ぶことをおすすめします。
まとめ|決める、作る、改善を続ける
問い合わせが来ないホームページに足りないのは、単純な更新量ではありません。
誰に向けて、何を届けるのかが決まっていなければ、書く内容も定まりません。その結果、更新が止まったり、続けていても必要な人に届かなかったりします。
まず、届けたい相手と伝える内容を決める。次に、必要なページを作る。そして、公開後のデータを見ながら改善を続ける。
この順番で組み立て直せば、今あるホームページも、問い合わせにつながる営業の土台として育てていけます。